RESCAPとは?
RESCAPは、Rural Extension Capacity Advancement Projectの略です。
農村地域(Rural)における農業普及制度(Extension Service)を強化(Capacity Advancement)することで、農村の自立的な発展を支援します。
RESCAPのイメージキャラクターは、「村の子供たち」。一過性のイベントで終わらない、持続的な農村開発のために、「彼らの10年後、20年後」を意識しながら、プロジェクトを進めていきます。 |
RESCAPは、貧困の根絶(最終的根治)を目指した新しいプロジェクトです。
RESCAPがもっとわかる「目次」はここ。(クリックするとジャンプします)
4. 新しいアプローチを目指して (3つのキーワードは"現場から考える" "協働から相手主体へ""システム全体")
付録: 所在地 連絡先
これらのプロジェクトを通じて、これまで270村の20万人にも上る村民が自分たちの村の開発に主体的に参加し、それぞれのニーズにあったプロジェクトを実施してきました。
その結果、主体的にかかわった住民たちの平均年収は倍増し、村組織の機能も強化され、また村の開発を支援した普及員の能力も向上するなど、多くのインパクトが確認されています。
では、これで本当にザンビアの貧困は"根絶"されたといえるのでしょうか?
プロジェクトがかかわった地域では状況はよくなっていますが、他の地域にはまったくその効果は広がっていません。またプロジェクトの対象地域でさえ、プロジェクトの支援が終了したとたんに、効果が逓減していくということもわかってきました。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
それは、これまでの技術協力プロジェクトが「モデル型」または「パイロット型」と呼ばれるものであるためです。
技術協力プロジェクトは、「プロジェクト」とあるように、期間や地域が限定されており、その中で質の高い「成果」を出すことが求められています。その限定の中で、プロジェクトはより洗練された成果を出すこととで、これを「モデル」として、途上国の政府の中に取り入れられ、それが全国に展開することを前提としています。
JICAの10年以上にわたる継続的な技術協力も、このモデル型のプロジェクトを続けてきました。しかし、そもそもそのような全国に展開できるような能力を、途上国がもっているという「前提」はあるのでしょうか? アフリカの途上国は国としての歴史も浅いこともあり、そのような政策を作って実施するという基礎能力自体が不足していることがあります。ザンビアももちろん例外ではないことが、この10年の活動の中で明らかになってきました。
住民参加型開発の手法や人材育成、そして村でのプロジェクト資金といったすべての条件がそろった状態でも、基本的な政府のシステムが十分に機能しておらず、「村への投入が大幅に遅れる」、「資金が無駄に使われる」、「現場に誰もいっていない」などの問題が噴出したのです。
もちろんモデルをつくるときに、相手国政府の能力レベルに合わせていくことは無論のこと、日本人専門家と相手国カウンターパートとの協働の中で、単なるモデルに終わらせない努力は日夜されています。 一方で、そのような状況下でも、JICAのプロジェクトは日本人専門家が入っている以上、日本人が納得できるレベルの質は常に求められていますし、目に見える成果を短期間に出すためには、相手国政府のスピードよりも、日本人の求めるスピードで物事を急がせてしまうことも現実として行われています。 |
これまでの技術協力プロジェクトのプロジェクトたる宿命であり、目に見える成果は出ても、それが他の地域に広がらず、また継続もできないという、モデル型プロジェクトの限界ともいえます。
貧困の根絶に本当に必要なものは何でしょうか?
10年以上の現場での活動を通じて、我々は、それを貧困根絶の政策を実施するための基礎的な能力そのものと考えます。
それは非常に単純なもので、「政策をつくり、計画し、実施し、管理・評価する」という基本中の基本の能力です。
いくらJICAの日本人専門家といった外部者がよいモデルをつくったとしても、それを政策の中に取り入れ、実施していくという能力が政府にない場合は、すべての技術協力が「モデル」で終ります。 それは「箱庭」「盆栽」と同じです。 算数・数学の教育に例えると、従来のモデル型のプロジェクトは、「公式」を編み出しているにすぎません。 その公式を使えば、問題を解けるということです。 |
しかし、その生徒に算数の基礎能力がついていない場合にはどうでしょうか。
公式を理解するための基礎能力がなければ、実際のさまざまな問題は解けません。
住民参加型プロジェクトのやり方を研修で教えて、それに資金をつけて実践してもらえば、見た目は貧困が解決したように見えます。
しかし、その公式を他の地域に応用しようとしたときには、条件が違ったり、資金が不足していたりする場合があり、公式が使えない場合の応用がきかないということになるのです。
このような良いモデルを提示しながらも、モデルで終わってしまっている技術協力プロジェクトはJICAだけの問題ではなく、他ドナーの場合でも非常に多いのが現実です。 そして、これからもこのような先の見えないモデル型プロジェクトは量産されつづけるでしょう。
なぜ、このような終わりのない非建設的な状態が続いているのでしょうか?
一つには、この「基礎能力」は基本的であるからこそ、見えにくいというところがあります。
通常、政府があり、また行政組織が存在する場合には、当然、そのような能力があるというのが前提です。しかし、そのあるはずの能力がないということを目に見える形で立証するのは困難で、またそのようないわば失礼な指摘を外部者がすることは政治的にリスクの高いことです。
そこで、能力がないとはいわず、「資金がないからできない」という、何回も繰り返されてきた、非建設的な理由(言い訳)に帰結していきます。
資金があっても使えないという「基礎能力の欠如」という根本的な問題から目をそらし、資金がないという「言い訳」を前提として、モデル型プロジェクトを繰り返しているかぎり、貧困は永遠に根絶できないでしょう。
この貧困根絶に不可欠なザンビア政府の基礎能力を向上するために、本プロジェクト「農村振興能力向上プロジェクト」(RESCAP: Rural Extension Service Capacity Advancement Project –through PaViDIA-)が計画されました。
英語名にあるように「農村地域」の「農業普及サービス」の「能力向上」を目指すプロジェクトです。
なぜ、農業普及サービスなのでしょうか。
ザンビアは資源にあふれた国です。 1000m-1500mの降雨量があり、東南部アフリカの40%の水量にあたる水源があり、また農地に利用可能な土地も広大です。 一方で、これらの条件を十分に生かし切れていないのが、貧困問題を抱える耕地面積5ヘクタール以下の小規模農家で、 彼らの可能性を引き出すためには、外部からの技術的な働きかけが重要です。 ただ、多くの小規模農家は僻地に住んでいるため、外部の情報や資源になかなかアクセスすることはできません。。 |
この農村地域における技術的指導の役割をになうのが、農業普及員たちです。
ザンビアの農業普及員は公務員であり、全国の農村地域に1500名が配置されています。 彼らは農村地域に住み、村人とともに生活しています。
もし、彼らを組織的に活用できれば、貧困根絶のための継続的な支援が可能となります。普及員の重要性は、実際に過去10年の支援活動の中で、普及員の活動が活性化することで、対象農家の農業活動も活性化したという経験からも確認されています。
一方で、政府の組織的な政策実行のための基礎能力がないために、彼ら農業普及員も基本的な管理さえできていない状態です。
計画・実施・報告・会合といった基本的な組織活動もできておらず、また技術的な視点からの人材育成を怠っているため普及員の技術的な知識も古いものになってきています。
それは単なる資金の問題ではなく、組織全体としての基礎能力の問題です。
「基礎能力」は基本的であるからこそ、それを向上させるのは非常に難しいものです。が、10年の経験から本プロジェクトでは以下の基本方針でプロジェクトを計画・実践しています。
キーワードは「現場から考える」「協働から相手主体へ」そして「システム全体」です。
「現場から考える」とは現場の実践から組織の能力を考えることです。 能力は単なる知識ではなく、それを現実に生かすものです。 10年の歳月を経て作られた住民参加型の開発手法を組織の末端である現場で活用し、 その現場での活動から見える課題を明らかにして、組織的な問題と原因を突き止め、具体的な改善を繰り返すことで、実践的な組織としての能力を向上させます。 |
「協働から相手主体へ」とは、プロジェクトに派遣される日本人専門家とザンビア人カウンターパート職員との関係です。
これまでも「協働」という名のもとにザンビア人と日本人が一緒に汗をかいてその中で実践的な知識を学んでもらうということは実践されてきました。
RESCAPでは、それをさらに先鋭化し、協働というワーキングスタイルは継続しつつも、その主体はあくまでザンビア政府という位置づけを明確にしています。
日本人専門家が動くのは必ず最後。 それまでは日本人はアドバイザーに徹し、がまんしながらも、相手のペースを尊重しながら、相手が動くまで待ちます。
「システム全体」とは、プロジェクトの改善対象です。
大きく分けて、「本省」「州・郡の地方事務所」「現場普及員」「農家」という対象がありますが、RESCAPでは、これらのシステム全体を改善の対象にしています。
現場に近い農家や普及員での抱えている技術的な課題を改善するなかで、その指導は地方事務所の職員の役割であり、また政策としてそれを生かしていくのは本省の職員の役割です。システム全体を対象にすることで、システムとしての課題も明確化し、組織全体の改善を目指していきます。
このシステム全体を対象としていることから、RESCAPでは、現場から政策レベルまでの、以下の4つの柱をプロジェクトの成果として設定しています。
(1) 適正農業技術の開発
(2) 農業普及員の育成
(3) 普及活動の管理(モニタリングの強化)
(4) 政策能力(調整機能の強化)
適正な農業技術が開発され(1)、普及員につたわり(2)、それが普及員から農家につたわる。それを継続的に支援・管理し(3)、また政策につなげる(4)。一つ一つの成果が、有機的に連携しながら活動が行われ、その中で農業省の基礎能力を実践的に向上させていきます。
RESCAPは、さまざまな改善案を進めていきました。一つの成功例として、「普及員手帳」の導入があります。(こちらから無料でダウンロードできます。) 普及員の日々の計画と報告、活動報告の様式の統一、そして貴重な農業基礎情報を一つにまとめた冊子です。 プロジェクトが推進したこの冊子は効用が認められ、プロジェクトの対象地域のみならず、農業省の正式なツールとして、全国の1500名の普及員全員が活用しています。 しかも、その製作費は、広告費という形で民間企業からの支援を得ており、すでに持続性が保たれています。 この普及員手帳のほかにも、プロジェクトが提案している普及員研修プログラムが、政府によって他の地域にも活用されるなど、すでに全国規模でプロジェクト効果が表れています。 このようにプロジェクト開始から1-2年で、プロジェクト効果が全国規模での広がりを見せるというのはあまり例をみません。 |
それも、RESCAPの3つのキーワードを通じて、農業省の普及サービスの基礎能力を強化しているからこそ、全国に自然に広がったといえます。
もちろんこの3つのキーワードにあるように、相手の主体性やペースを尊重し、また全体のシステムを相手にしているため、一般的な援助プロジェクトに比べると「農家の収入が倍増する」とか「活動が急激に活性化する」というような目に見える成果はすぐに出しにくいところがあります。
そのため、これまでのモデル型のプロジェクトに比べれば、わかりにくいプロジェクトです。わかりにくいプロジェクトだからこそ、理解を促進するための広報の努力が不可欠といえましょう。
一方で、成果を急ぐあまり、主体であるはずのザンビア人カウンターパートを追い越して、日本人が活動を肩代わりするということは本末転倒と考えています。
一過性のイベントやモデルづくりに終始しない、貧困”根絶”のためのプロジェクト、RESCAP。
これからも、貧困問題の真の解決「根治」にむけて、基礎能力の強化を目指して、誰も挑んだことのないアプローチで取り組んでいきます。
プロジェクトオフィスの所在地/連絡先